【読書録】今日も一日きみを見てた
恋愛小説にありそうな場面のタイトルだが、今回みつめる相手は人ではなく、猫である。
角田光代さんの『今日も一日きみを見てた』を読んだ。タイトルと本の表紙を見たときは「なぜ猫が表紙なのだろう?」と疑問に思ったけれど、本を開いて納得した。
私は猫を飼ったことがないので、猫を飼っている人はこういう考え方をするのかと、異世界を見た気分になった。
特に驚いたのは、猫を飼っている人は、自分の家の猫だけでなくすべての猫を好きになるのに対し、犬を飼っている人は、自分の家の犬以外は(猫の場合と比べて)そこまで好きになるわけではない、ということだった。角田さんの言葉を借りれば、猫1匹はすべての猫になるが、犬1匹は1匹でしかない、という感じ。
ここで、ふと猫を飼っていて、かつ猫好きな友人を思い出してみると、たしかにそう。友人はもちろん家で飼っている猫がダントツでかわいいのだが、道端や出かける際に他の家の窓ごしに見える猫を見ても可愛いという。なんなら、自分と会った時に、道中見かけた猫のことを報告してくれる。
他方、犬を飼っている人からはあまりこういう話は聞かない。正確に言うと、その人自身が買っている犬の話は聞くのだが、たとえば散歩中にすれ違った他の犬の話はしないのである。
ちなみに、この話を猫を飼っている友人にしたところ「それ、実際に猫を飼っている他の人からも聞いたことがある」と言われた。猫を飼ったことがないBC(Before Cat)の自分が気づけなかっただけで、猫を飼っている人にはそれを自覚している人もいるのかと重ねて驚いた。
猫と犬と、わざわざ二項対立になるような話をする必要はないのだが、猫と犬はそれをめでる人の行動に変化をもたらす力があるのかなあと思った。
自分はまだBC(Before Cat)なので、こんな世界もあるのかと思いながら読んだ。そうはいっても、一匹の猫は全世界の猫になりうるって、猫好きの友人たちを見ていると確かにわかる気がする。
— oαk (@83greentea) 2021年10月7日
今日も一日きみを見てた / 角田 光代 #読書メーター https://t.co/jfSTew1jQR