読書録~看書便條~

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タイの寝台列車【夜×旅】

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角田光代さんの『幾千の夜、昨日の月』を読んで、自分の夜×旅の思い出を振り返りたくなった。

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夜×旅というと、真っ先に思い出されるのが、タイ乗った寝台列車である。

当時学生だった私は、冬休みを利用して、東南アジアの国を回る計画を立てた。ルートとしては、ラオス→タイ→マレーシア→シンガポールという順序で、途中で同伴者の入れ替えも含みつつ、約2週間かけてマレー半島を縦断した。

この旅行の計画中、どうやらラオスビエンチャン)→タイ(バンコク)への移動は寝台列車(陸路)でできるらしいということを知った。時間は半日ほどかかるが、寝台列車で寝て過ごせばあっという間だろうし、なにより飛行機を使うよりも安かった。

また、ラオス→タイへの旅行は一人ではなく先輩・友人と4人で行うつもりだったこともあり、孤独感や不安感をあまり感じることもなかったので、迷うこともなく寝台列車を使うことに。ちなみに、記憶の限りでは、私にとってこれが人生初の寝台列車になった。

詳細な行き方は省くが、方法としては、まずはビエンチャンラオスの首都)から、ノンカーイという寝台列車の始発駅までバスで移動する。実はこの時点ですでにラオスとタイの国境をまたぐことになるので、バスを降りたら入国審査を受けたうえで、列車に乗車することになる。

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ビエンチャンラオス)から、ノンカーイ(タイ)に行くバス。

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国境越えをするバスとは思えない、いかにも普通のバス停。島国日本の人間とは、国境越えの身近さもことなるのだろうかと思った。

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ラオスとタイの国境であるメコン川

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寝台列車の発車駅。駅は静かなのだがワクワクが止まらなかった。

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移動中。


寝台列車が初めてだったので、旅行だからいうよりも、寝台列車を経験する、ベッドごと別の場所に運ばれる経験をこれからするのだ、というワクワクを感じながら乗車。

寝台列車の座席はボックス席だったので、4人でお菓子を食べつつ、おしゃべりをした。夜になると、この座席が二段ベッドになり、白い布団をもらえる。布団にくるまりながら、社内が消灯されるまでおしゃべりをした。異国にいるのに、まるで修学旅行の宿に泊まっているような感覚だった。

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寝台列車の車内(ベッドではなく座席モード)。

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タイの車窓から。

消灯時刻になり、眠りにつこうとしたのだが、私は二段ベッドの下の段にいたので、車輪の音で正直よく眠れなかった。ただ、社内も、窓の外の景色も真っ暗で、寝る以外にすることがないので、目をつむりながらじっとしていると、自然と眠ってしまった。

朝6時過ぎ、車内の電気がついたので目をあけると、数時間前まで真っ暗だった窓の外から朝焼けが見えた。眠っている間に、のどかなノンカーイから、建物がひしめくバンコク付近まで移動してきたことを感じつつ、あまりにも景色が大きく変わっていたので、その変化がグラデーションのようだったのか、どこかでぱっきり変わったのか、見逃しちゃったなあ~という気分にもなった。

そうこうしているうちに、終点のバンコクに到着、列車から降りた私たちは、そのままバンコク観光へ向かった。

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タイの朝

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乗車から11時間後、バンコクに到着。メトロポリタンな雰囲気。

寝台列車の中では、おしゃべりと睡眠しかしていないので、何か特別なことをしたわけではない。ただ、寝台列車とは、その空間自体に特別感があって、たとえ安いシートでも、我々のような日常的に寝台列車に乗らない者にとっては、十分な非日常感とワクワク感を感じさせてくれる。深夜までずっと友人とおしゃべりをしていられる環境、だけど実はこのおしゃべりをしている空間ごと旅をしているという状況。ワクワクしないわけがない。しかも、そのワクワクは、旅先でホテルに泊まるのとも、友人の家にお泊りするのとも違った、旅先での夜、ではなく、夜ごと旅になるような、寝台列車独特のものだったように思う。

また機会があれば、別の場所でも寝台列車に乗ってみたい。できれば次は二段ベッドの上の段で。