【読書録】砂糖の世界史
最初に見かけたときにはそこまで惹かれなかったものの、別の本を読んだことがきっかけで興味がわき、結果的に手に取った本…というものが何冊かある。
今回読んだ『砂糖の世界史』は、自分にとってはまさにその類だ。
最初見かけたときは「砂糖かあ~」くらいにしか思わなかったが、植物に関する本を読んだ際、サトウキビがとりあげられており、引用文献にも『砂糖の世界史』が記載されていた。植物に関する本が面白かったこともあり、歴史ではなく、砂糖(サトウキビ)という観点からこの本に興味がわき、手に取った。
ちなみに、本書を手に取るきっかけとなった本の感想はこちらにまとめている。
この本では、歴史ということで、大昔にさかのぼり、砂糖がいつごろからつくられ、どのように扱われてきたのかを概観する。なお、砂糖の歴史、というタイトルだが基本は人間視点の歴史であり、人間が砂糖の何に惹かれ、どのように生産・活用したのか、ということが説明されている。
昔、今よりも世界全体がやや貧しかった時代は、カロリーを効率的に取れるという意味で、砂糖が薬のように扱われていたことがあった。今では砂糖の過剰摂取は控えるように、という文言をいたるところで見かけるが、そもそも当時の人々の食生活、栄養状態が現代とは大きく異なるのだから、この認識の違いは(最初読んだ時は驚いたが)妥当だろう。
また、当時砂糖は高価だったため、ステータスシンボルとされた時期もあった。当時、砂糖の生産地と消費地は異なっており、生産が安定した時期の場合、南米やアフリカで精査された砂糖がイギリスをはじめとした欧州へ輸出されたという。
なお、砂糖の貿易および消費拡大のキーとなった場所はイギリスだった。イギリスは、(彼ら視点での)極東から得られる茶と、西から得られる砂糖を一緒にした国だ。これがきっかけで砂糖の消費量が増加、さらにその後、砂糖の価格低減もあって消費が一層拡大したという。その傍ら、砂糖をより多く生産・入手したいという欲求に基づき、新興国では奴隷による生産が実施され(背景として奴隷貿易も行われ)た。優雅なティーブレイクの裏で、プランテーションやモノカルチャー経済が進展したことも本書は指摘している。なお、本書では紅茶と言えばイギリス、と産地ではないにも限らず言われるゆえんも説明されている。
そんな砂糖はこれからも世界商品であり続けるのかと考えると、飽食時代ゆえに先進国を中心に低カロリーの甘味料に座を奪われるのではという指摘もしている。砂糖に振り回される人間の歴史を見たような気もしたが、砂糖も人間に振り回されることがあるらしい。
カリブの砂糖とアジアの茶がイギリスで出会って砂糖革命発生。砂糖の消費と生産(奴隷制度含む)にはイギリスが深く絡んでいる。砂糖に振り回される人間と、人間に振り回される砂糖(最後部分)のヒストリー。
— 蜂蜜綠茶🍯🍵 (@83greentea) 2022年2月18日
砂糖の世界史 (岩波ジュニア新書) / 川北 稔 #読書メーター https://t.co/ruurJjAnoJ