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【読書録】女性のいない民主主義

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今回読んだ本は『女性のいない民主主義』。日本だけでなく、多くの国・地域で女性参加が考慮されていない民主主義に近いがそうではない状態にとどまっていることがわかる一冊。

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以前先輩がこの本をお勧めしていたので、いつか読もうと思っていたところ、なんとKinde Unlimitedの対象になっていたのでさっそく読了。

男性性を優先する社会

本書は、研究者の方が書かれただけあって、ちょっとした疑問にも先行研究を交えて解説がされていて、とても読み応えがあった。冒頭、「なるほど~」と思ったのは、社会は男性ではなく「男性性」を優先しがちなために、ルールなどに男女の制限が明記されていなくても結果的に男性優位になりがちだということ。

ジェンダー化された組織では、明示的に男性を優遇しているわけではない組織規範も、「男らしさ」を優遇している。 このような視点から見れば、資本主義という経済システムそのものが、激しい市場競争をともなうという意味で、「男らしさ」と結びついている。

確かに、このご時世、性別を以て労働者に役割や目指すべき姿等を定義したら炎上間違いなしだが、「男らしさ」につながるような言葉を使った定義であれば、通用してしまうかもしれない。例えば、私自身はこれは女性も持っている良い性質だと思うけれど、「質実剛健」、「野心的」といった言葉は女性を褒める際にはあまり耳にしない印象がある。他方、女性に求められがちなのは、補助的役割や見守りなどであり、このような組織の規範にジェンダー規範が課せられていると筆者は指摘する。

このようなジェンダーをベースにした規範に従う場合、女性は「ダブル・バインド」に直面するという。組織の規範とジェンダーの規範の板挟みになるということだ。

ダブル・バインドとは、二つの矛盾する要求で板挟みになることを意味する。一方には、積極性があり、競争的な、「男らしい」行動を求める組織規範があり、他方には優しく、包容力のある、「女らしい」行動を求めるジェンダー規範がある。

女性のいない「民主主義」

また、この本のタイトルにもなっている「女性のいない民主主義」という状態について、筆者は、「男女平等」が民主主義の定義に含まれていないことを丁寧に説明している。

例えば、民主主義をうたう米国であっても、初めはその「民主主義」から女性は排除されていた。また、日本も女性の参加率が低い「民主主義」の状態に甘んじている。「民主主義」と言いながら、それは男性から見た民主主義であり、女性から見れば本質的にな何も改善していない状況に映っている可能性がある。

重要なのは、それが誰の視点から見た民主主義であるのかを、明確にすることであろう。男性の選挙権を基準にした民主主義の歴史と、女性参政権も含めた民主主義の歴史は、おそらく違うパターンを描くに違いない。ハンティントンの民主主義の歴史は、いわば「白人男性の民主主義」の歴史である。他の視点から見た民主主義の歴史は、そこには表れない。

この部分、学者さんが書かれた本だからというか、著者の方がすばらしいのか、おそらく本来であれば自分のような素人には理解しきれないであろう先行研究をたくさん踏まえつつ、いかに女性の存在が抜け落ちてきたかを解説している。

男性稼ぎモデルの下でつくられた社会システム

振り返って日本の状況を見てみると、日本はOECDの中でも女性の議員割合が再会であるなど、先進国の中でも男女の不平等度合いが大きいことが指摘されている(図参照)。

図:女性の議員比率(2021年、%)

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本書では、日本の状況について、政治の世界と、政治も含めたもっと広い世界に分けて考察している。具体的な内容としては本を読むのが一番なのでここでは割愛するが、個人的に印象に残ったのは、日本で受給可能な補助などは、男性が稼ぎ、女性が家事や育児を負担することを前提に構築されてしまっているという指摘だった。

性別に関係なく、稼ぐ個人に焦点を当てた制度を作った方が、男女平等思考が強くなる(詳細は位置No. 1318)が、日本の場合は家族像に焦点が当たっており、その構成員というのは働く男性と家を守る女性であって、直接恩恵を受けるのは男性でしかないのだという(他方、女性は無償で家事育児介護に徹することが求められてしまう、ヒドイ)。そして、女性の政治参加度合いが低いために、こうした状況の改善もなかなか進みにくいのだという。

ちなみに、日本の話からそれるが、女性の政治参加を促すきっかけとしては、政治勢力の参入があるという。

民主化後に参入した勢力が男性優位主義的な志向を持つ場合には、むしろ女性の退場が促進されてしまう。

ちなみに、日本も野党が妥当与党で女性候補を擁立するケースが見られたことが、本書では指摘されている。

まとめ

男女平等が民主主義の定義に含まれていない、ということがこの本を読んで一番衝撃的な内容だった。ただ、言われてみると、日本が男女不平等でありながら「民主主義」と言ってしまえる現状にも納得がいった。

また、「おわりに」の部分を読んで興味深いと思ったのは、本書では女性の政治参加を促す取り組みが紹介されたが、著者自身がその方法は女性の政治参加には有効であっても、性的マイノリティを代表するには適さないであろう、と指摘していたことである。

女性は、マイノリティの中のマジョリティであって、マイノリティの中のさらにマイノリティの声をくみ取り、反映しやすくするような仕組みを作るためには、また別の視点が必要になるのだと感じた。マイノリティと言ってもひとくくりにはできない。