読書録~看書便條~

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【読書録】「がんになって良かった」と言いたい

タイトルを聞くと、人によってはぎょっとするかもしれない。

どういう意味?病気に何てならない方がいいじゃないか、何が良いことなのか、などなど。

ここでそういうことを思った人にこそ、ぜひこの本を読んでみてほしいと思う。この本の著者も、この言葉について考えをめぐらし、生き延びた者からこそ言える言葉なのではないかと自問自答している。

今回読んだ本はこちら↓

bookmeter.com

この本の筆者は、白血病で闘病していた大学生。入院していると思えないほどツイートはバイタリティーにあふれていた。Twitterのほか、ブログも拝見していたのだが、おそらく相当頭の回転が速い方だったのではと思っている。

本書はそのブログの内容も含んでいるので、ブログを読んでいる方にとっては既知の内容かもしれない。ただ、とても情報量の多いブログなので一回読んではいおしまい、ということをする必要はなく、何度読み返しても考えさせられることがある。

 

この本のタイトルの重要な部分は意外と鍵括弧の外にあるのではないかと感じた。「『がんになって良かった』と言いたいというタイトルからは、筆者自身が「がんになって良かった」なんてストレートに思っているわけではなく、言えるようになりたいという気持ちが感じられる。

言えるようになりたいとなぜ思うのか、という葛藤や、「よかった」とストレートには言い切れないような壮絶な闘病については、ここで書くよりも本を読んでもらった方がいいと思う。

「病気になんてならない方がいいじゃない」と思う人がほとんどだと思うが、実は意外と闘病のリアルな部分を見たり聞いたりしたことがある人はいないのではないかと思う。かくいう自分も、身内ががんではあったのだが、発覚後季節をまたぐことなく亡くなってしまったことや、本人が弱みを見せない性分だったこともあり、いかに闘病が辛いのかということを直接聞いたことはなかった。身内でありながら、辛さは推して測ることしかできず、しかし推し量るための材料もほぼないような状態だった。

そのため、この闘病記を読んであまりのすさまじさに驚いた。体よりも先に心がまいってしまうのではなかろうか、とおもうような経験がつづられていた。これほどまで命について考え、死を身近に感じたら、病に対する見方、生きることに対する見方も変わって当然だろうと思った。

だからこそ、身近に闘病をしている方がなく、自信も大病を経験せず、この本のタイトルに違和感を感じた人にはぜひ中身を読んでほしい。自分が一切知らないような世界と価値観を嫌でも見せつけられることになる。そして、自分はいま健康に生きていられること、未来が具体的には見えていなくても「あるようにみえている」ことがどれほど幸せなことなのか、感じることができるだろう。