読書録~看書便條~

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あとづけで考える、理科研究の意義

最近、YoutubeSNSを見て、夏休みの宿題として課される「自由研究」が本当に自由な研究であることに衝撃を受けた。例えば以下のようなもの。

benesse.jp

これは地域によるものなのか、学校の方針によるものだったのか、いまでもよくわからないのだが、私が小中学生時代に与えられた夏休みの宿題に「自由研究」という名称はなかった。

かわりに課されていたのが「理科研究」であり、内容は理科に関するものに限られていた。理科なら何でもいいので、その意味では「自由」な研究だったかもしれないが、例えば文学作品の研究などは対象外で、何かしら「理科」に関係のある研究をする必要があった。

さらにいうと、研究内容だけでなく提出フォーマットも細かく指定されていた。なんでも、優秀だった作品(?)は地区の理科研究展に出品するとかで、フォーマット(といってもサイズくらい)が統一されていた。

もう何年も前のことなので、自分が提出した内容は忘れてしまったが、私は理科が好きだったので、特に苦痛には感じず取り組んでいた。ちなみに、今思えば実験の仕方も計算の仕方も雑で、よくこれを学年代表にしたなとは思うのだが、中学生の時地区の理科研究展で一度銀賞をとったこともあった。

 

たまたま理科が好きだったので、私はこの宿題をあまり苦痛に感じなかったが、理科が好きでない(というか関心がない)生徒にとっては苦痛だっただろうなあと思う。

さらに、本来研究というのは科目に限らず「気になることについて調べてみよう」という疑問と動機から始まると思うのだが、理科研究ではその対象が理科に絞られてしまう。

もし、理科以外(たとえば文学とか歴史とか、言語とか)に興味がある生徒が、純粋に興味のある分野の研究をせずに、成績のためだけに理科研究をこなしていた、というのであればそれはそれで機会損失だったのかもしれない…という気もしている。

たとえば、今の私が自由に研究をしてよいといわれたら以下のテーマを掲げると思う(単純に自分が気になったり、知りたいと思っていることの羅列)。

  • 人気漫画の主人公の人物像と当該社会情勢に関する考察-主人公は時代に求められる人物像を描き出すのか(少年漫画・少女漫画別の考察)-
    背景:ワンピース、鬼滅の刃で描かれる主人公のキャラクターが全然違うよねという記事を読んだので、もっといろいろな年代の作品を見て考察してみたい。まずは戦後日本、余力があれば戦前や海外のアニメ・漫画を対象にしてもおもしろいかも。
  • キムチの発酵度合いと味の調査ー開封後何日目が一番おいしいのか(冷蔵保存の場合)ー
    背景:いつまでであればそのままキムチとして食べるのがよく、いつからは加熱(豚キムチにするとか)したらよいのか、目安を知りたい。
  • ワイヤレスイヤホンの使用感と性能の比較ー使用感・音質・費用対効果の観点からー
    背景:以外と1,500円のイヤホンの性能がよかったので。性能だけでなく使用頻度なども含めた効用を考えると、誰にどのようなイヤホンが向いているのか違いが生じるのではと思ったから。

その一方で、理科研究を行うと、研究テーマ設定→仮説設定→検証方法の検討→実験→考察という「研究のお作法」を実践を通じて学べるというメリットはあると思う。このお作法は文系理系関係なく大事なことではあるが、文系(それこそ社会科学的なテーマ)に比べて仮説設定や結果検証を数字を伴う具体的なものにおとしこみやすく、小中学生でも取り組みやすいのではと思った。たとえば、こんな感じで(個人的には当時東大博士課程だった須貝さんの発表がそれを体現していると思った)。

www.youtube.com

文系だったこともあり、大学進学後は理科の授業で習った知識を使うことはほぼなかったが、テーマ決定→仮説設定→検証→考察→発表というプロセスを踏む機会は難度もあった。

そのため、後付けではあるが、あの理科研究で踏んだ(当時は踏まされていると思っていた)プロセスはその後の大学生活・社会人生活にも通じていると感じる。

その意味では、このプロセスを小中学生でも練習できる理科研究は、ある意味とても役立つ宿題だったのではと思う。