【読書録】細胞が自分を食べる オートファジーの謎
Kindle Ulimitedにて、『細胞が自分を食べる オートファジーの謎』を読んだ。
オートファジーという言葉は初めて耳にしたが、細胞が細胞自身を食べるというのはどういうことなのか、アポトーシスとは違うのかが気になり読んでみた。
今回読んだ書籍
水島昇「細胞が自分を食べる オートファジーの謎」2011年、PHPサイエンス・ワールド新書
詳細は後述するが、本書にもある通り、当時はオートファジーという分野は学問としても有名どころとはいえず、研究者も限られていたようだ。
ただ、その状況でも、オートファジーについて専門家以外にもわかりやすく説明してくれる書籍を出版したというところに、先見の明を感じざるを得ない。
オートファジーとは
この本を読むまで知らなかった(時事ネタについていけていなかった)が、オートファジーの研究で、東工大の大隈名誉教授が2016年にノーベル賞を受賞されていた。
オートファジーというのは、「自ら(Auto)」を「食べる(Phagy)」という意味で、細胞内でタンパク質からアミノ酸を作っている。人間の場合、食物からタンパク質を摂取し、それが分解されてアミノ酸になるが、それだけでは不十分だという。そして、その足りない分のアミノ酸がオートファジーによってつくられているそうだ。
これは、細胞内でリサイクルを行っているようなもので、飢餓状態になったときにオートファジーは「死ぬほど大事」な機能であるという。
高校の生物で脇役だと誤認したリソソーム
高校の生物の授業で、真核生物の細胞について勉強をした。
下のイラストのような図と共に、各細胞小器官の説明を覚えた記憶がある。
真核生物の細胞内には、核やミトコンドリアやゴルジ体、中心体、リボソーム、リソソームなどの細胞小器官あると学んだが、教科書のイラスト上ではリソソームは小さいマル(〇)として書かれることが多く、ミトコンドリアやゴルジ体と比べると見た目のインパクトは少ない。
また、名前が似ているリボソームという細胞小器官もあるため、どっちがリソソームえ、どっちがリボソームだっけ…とテスト前に確認をしていた記憶がある。サイズ的にはリソソームの方がリボソームよりも大きいので「大きい方がリソソーム」という受験生ならではの哀しい暗記をして大学受験は乗り切った。おかげで、私のリソソームへの理解は「リボソームよりちょっと大きくて丸い細胞小器官」という知識しかない。
(ちなみに、一応まちがっていないか、こちらのサイトでも確認した)
かつ、文系だった筆者が生物を使ったのはセンター試験のみであり、試験で問われるのは(少なくとも私の模試およびセンター試験の経験によれば)大抵ミトコンドリアとかゴルジ体とか、もう少しインパクトの強い細胞小器官ばかりだった。リソソームは4択問題の選択肢にときどき登場することがある程度だった。
…そんなわけで、筆者にとってリソソームは見た目のインパクトは薄く、試験においても自信が回答になることは少なく、時々リボソームとリソソームを混同してしまった受験生をプチパニックにさせる脇役、という認識だった。
さて、自分語りが長くなったが、オートファジーにおいてはこのリソソームがとても重要になる。リソソームは細胞内のタンパク質を分解するために必要な酵素をたくさん持っている細胞小器官である。
オートファジーにおいては、オートファゴソーム(アミノ酸に分解したいものを、膜で包んだもの)がリソソームに取り込まれることで、オートファゴソームごとアミノ酸に分解される。
本書には、オートファジーの機能だけでなく、オートファジーの意義についても書かれているので、それを読むと、あのリソソームがこんな役割を果たしていたとは…!と感動するに違いない(少なくとも私の中では脇役→重要なものという認識にかわった)。
ちなみに、先に紹介したノーベル賞では、液胞もリソソーム同様オートファジー機能が起こることを明らかにしたもので、こちらも、センター試験(当時)ではあまり問われなかった液胞が大活躍している。高校生物で覚えたことはたくさんあったが、教科書には載らない/当時は明らかにされていなかった細胞小器官の機能が明らかになっていることを知るのはとても面白く、高3で生物の勉強をやめてしまったのは少々もったいなかったなと思った。
なお、リソソームによるオートファジーは飢餓状態で重要な役割を果たす。そのため、プチ断食(絶食ではなく、食べる量を減らすとか)によって細胞内のリサイクル(オートファジー)が促進されるという考え方もあるらしい。あくまでも関連がありそう程度の書きぶりではあるが、巷で言われるような健康法にも一応裏付け的なものがあるのかとわかっておもしろかった。
高3で停止した知識のアップデートのためにも、時々この分野のジャンルを読みたいと思う。