【読書録】新釈 走れメロス
いつぞやの現代文の授業で読んだあの作品のパロディ新釈か…
とおもい、森見登美彦さんの『新釈 走れメロス』を読みました。
ざっくりいうと、走れメロスをはじめとした有名な文学作品をベースに(いわゆる大学の授業や研究に対しては)怠惰な京大生の日常(?)を綴った話がかかれています。
山月記や走れメロスを題材としたストーリーは、とても一般的大学生ならこんなことしないであろうという内容なのですが、作品に登場する大学生たちであればやりかねないな…と妙に納得して、読めてしまう…そんなお話でした。
一番好きだったのは「山月記」で、登場人物の「斎藤」が言葉でもって世界のすべてを把握できると思ったのに、言葉を信じられなくなったとたん自分が何者であるかさえも見失ってしまう、という転回が悲しくもおもしろかったです。
一番笑えたのは「走れメロス」。完全に太宰治の作品のオマージュなのですが、やっていることと考えていることが、いかにも変でした(でも、京大ならこういう人いても納得しちゃいそう)。ただ、私はどちらかといと、彼らの踊る「美しき青きドナウ」を冷ややかな目で一瞬見たのち、客席から去る観客側の人間だと思います。
この本を読む前に、同じく森見登美彦さんの『夜は短し歩けよ乙女』を読んでいたのですが、その内容が「走れメロス」の場面ともつながっているようでした。
むしろ、『夜は短し歩けよ乙女』を読んでいなかったら
「詭弁論部?なんじゃそりゃ?」
と気になって読めなかったかもしれません。さきに筆者の世界観を予習しておいてよかったなと思いました。
ちなみに『夜は短し歩けよ乙女』も『新釈 走れメロス』も表紙の女性はかわいらしいですが、主人公はもっぱら男子大学生です。ヒロイン的な可憐な女性は登場するので、表紙はその方の姿なのかなとも思っています。
非日常的な人物の日常を綴った作品でおもしろかったので、これをきに新たに知った作品や、名前だけ知っていて原作を読んでいない作品を、読んでみようと思いました。